中村なん先生の「いじめるヤバイ奴」が面白すぎる(レビュー&感想)
いじめるヤバイ奴という作品がめちゃくちゃ面白い。
つい先日たまたま出会った作品なのだけど、あまりにも面白くてここ数日はずっとこの作品のことを考えていた。
本当に、かなり計算されて作られているんだろうなという作品で、多くの要素が詰まっていた。
ジャンプではなくマガジンの、マガポケというネット漫画なのだけれど、この記事を読んだ人にも是非読んでほしい。本当に面白い。
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本当はあらすじを書きたいところなんだけど、この作品の恐ろしいところはちょっとしたあらすじでは全く面白さが伝わらないところなんだよなあ。
とにかく1話を読んでみて、面白いと感じたらその後の話も間違いなく面白い、としか言いようがない。1話だけでも読んでみてほしい。
ちょっとしたネタバレをするのであれば。
私はこの作品を読んだとき、「サイコパス上手の白咲さん」という言葉が浮かんだ。そんな感じの作品だった。
ネタバレありで以下に感想を書いていくので、未読の人は読まないようにしてもらいたい。
以下、ネタバレありの「いじめるヤバイ奴」感想
すごい作品だった。
1話は、最近ちょっとずつ見るようになってきた「序盤で世界観を示し、後半でその世界観を壊す」という手法が使われていて、ここでまず一気に興味を持たせている。
前半を読む限り、狂人のいじめに対して正義感を持った人間が立ち向かう話にしか見えないのに、後半になると完全な逆転がおこる。
いじめている奴が実は脅迫されていて、いじめられている側が実はいじめを強要している。こんなこと誰が予想できようか。想定外にもほどがある。
この構図が本当に意味不明で、読者は混乱させられる。そして多分、その混乱が「未知の感覚」を与えることにつながり、そのままそれが「面白さ」につながっているんだろう。「新しいものを見た!」という感覚は「面白い」という感覚につながるから。
そのまま平然と話が進んでいく。しかし、2話、3話と進んでいくうちに、読者の「感覚」が狂わされていく。
まず、主人公の「いじめるのがつらい」「死にたくない」という感覚はすごく理解ができるもので、そのまま自然に読者は主人公に感情移入させられる。
そうするとどうなるかというと、無事いじめをできている状況に安堵をするようになり、いじめが失敗する状況に危機感を覚えるようになる。
そうなると、「白咲をいじめる」という、常識で考えると「よくないこと」とされることが、読者の中で「良いこと」になる。この常識と読者の感覚のズレを生み出すことで、再び読者を混乱させている。そして、またその混乱が面白さにつながっている。
このように、読者を混乱させる展開を作り出すことで面白さを作っていくのがすごくうまい作品だったなと思った。
あと、1話2話3話の構造がうまい。1話ラストで混乱させ、2話と3話で感情移入させながら「いじめの成功=良いこと」という図式を読者に植え付け混乱させるという流れがすごい。この3話で一気に読者を引き込んでいる。
そして公開期間終了で6話と7話は読めなかったのだけど、8話以降もすごい。
さっき、「いじめ=良いこと」の図式を作ることで読者を混乱させていると話したのだけど、それだけではなくて、「いじめる行為」に免罪符を作り出すことで、読者の加虐欲というものを刺激しているのもこの作品のすごいところだった。
すごい。免罪符を得ていて、そのうえで2話と3話で作られた「いじめの成功=良いこと」という図式もあって、読者は何のストレスもなく白咲をいじめるシーンを見ることができる。そのうえで、「恐ろしい人間をいじめている」というのは、読者にカタルシスを与えることにつながっているのではないかと思う。
つまり、いじめに免罪符を作ることで「いじめるシーン」のストレスを消した上に、さらに「主人公が白咲から理不尽な暴行を受ける」ということへのストレスの解消に、白咲をいじめるシーンを使っているのだと思われる。このストレスコントロールもうまい。
といった感じで、1話~8話の間にこんなにも多くの要素が詰まっている考えられた作品だった。めちゃくちゃ引き込まれた。
でも、こうやって書いてもまだこの作品の魅力の半分も語れていないと思うし、私自身未だにこの作品がどうして面白いのかを完全に言語化できてはいない。
本当に続きが楽しみな作品になってしまった。加藤を一体どうやって攻略しろっていうんだよ……あいつ白咲と同じ狂人だよ……。