●アニメ映画版「君の膵臓を食べたい」感想●山内桜良の哲学がすごく良い作品だった
君の膵臓を食べたい感想
原作未読。実写映画未視聴の状態で見てきて、内容的にはかなり満足できる映画だった。
余命少ない女の子と、周りの世界から距離を置いている男の子のボーイミーツガールという、一度は見たことがある王道ストーリー。
登場人物もその王道のテンプレから外れすぎているわけではない。
だけど、「ただどこかで見たことのある作品」にならなかったのは、おそらく登場人物たちが抱いていた哲学から、「彼らがあの世界で生きている」ということが強く伝わってきたからではないかと思う。
個人的に好きだったのは、ヒロイン山内桜良の「選択を繰り返した結果、今がある」という考え方と、「生きるというのは人とかかわること」という考え方。どちらもラストにつながる伏線でありながら、山内桜良という人間を表現していてすごく良いセリフだった。この二つがかなり印象に残ってる。
あとは物語の序盤ではった伏線を最後にきれいに回収していったことだろうか。特に「正反対の人間」を散々強調しておいて、最後に「正反対故にお互いを見ていた」と持ってきたのはすごく良かった。どうして山内桜良が主人公に関わり続けるのかの理由も、ものすごく納得させられた。
流石に視聴回数は1回だけなので、あとはもう大体の流れしか覚えていないのだけれど。
あと、映画の演出に関しては一回実写で映画化してるだけあって、「アニメにしかできない演出をやろう」という気概にあふれていたと思う。
だけど、ちょっと演出過多に感じてしまって、そこはイマイチだったかもしれない。元の作品が「ザ・小説」なのも理由の一つなんだろうけど。
特に最後の手紙のシーンはなあ。あれ、すごく「小説」って感じのシーンで、映像作品向きじゃなかったのかなと思った。映像作品で使うには、あの日記は長すぎる。手紙みたいに短くなくて結構量があるものだから、ただ読んでいるだけじゃ間が持たなくなってしまう。
あそこで星の王子様を拾ってきたのは良かったんだけど、ちょいと唐突なのもあってすごく演出過多、という感じだった。あの演出はアニメにしかできない演出だったけど、でもあそこまでの演出だと逆に物語から覚めさせられて冷静になったので、私の趣味には合わなかった。そこはちょっと残念だった。
実写版は未視聴なんだけど、そっちはどうやって演出してたのかは結構気になる。
ただ、もちろん悪いばかりじゃなくて、作画は綺麗だったし、最後のお互いが正反対の方向を向きつつお互いを見ているという演出は良かった。あの絵を見るためにアニメ映画版を見に行ってもいいんじゃないかと思うくらいにはよかった。
原作はもう購入済みなので、暇を見つけては読んで感想を書いてみたい。特に映画版1回視聴しただけじゃ忘れてることも多いしなあ。
ちらっと読んだ感じ、もうしょっぱなから「あ、この演出は小説でしかできませんわ」ってのを見つけて驚いてる。本当に原作は小説でしかできないことを結構詰め込んでるんだろうな、楽しみだ。
あ、あと、映画を見ている最中たびたび頭の中でけやき坂の二人セゾンが流れていたので、ラストにそれを貼って締めたいと思う。